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期待と落胆

さらに続きで.

人のPERというのは,外から観測される結果決まる場合が多い.
そして,その分かりやすい観測手法とは,肩書きとか,メディア露出度とか,他人の評価だ.肩書きとかはある程度客観的なものだけど,メディアとか他人の評価というのは多分に主観が入る.そして,その主観はその実力以上に高い評価,つまり,高いPERがつくこともままある.企業の場合だと,ド○コムとか,IT系の新規上場企業に多いように感じられる.

酒井PMがIPA未踏ソフトウェアの天才プログラマー/スーパークリエイターの表彰式でおっしゃっていた事なのだが,
「技術者が一生のうちで天才と認定されることはまずない.幸か不幸か,君たちは天才プログラマーと認定されてしまった.これからは,同僚とかから,天才だろと言われ続けることになるよ.」

そのときは,語り口調が面白く何気なく笑っていたが,よくよく考えてみれば,実力以上に高い評価や期待をもたらされることは大変危険だ.つまり,その人の株の評価を実力以上にしてしまうと,つまり,バブリーに評価してしまうと,あるとき,株の大暴落を引き起こすことになる.その崩壊は,精神的に相当きついかもしれない.

スーパークリエータだろうが何だろうが,普通の技術者である.ちょっと,独創的な視点をもったとか,運が良かったというだけで,プログラミングが得意とも限らないし,熱心に働くとも限らないし,次々と新しいアイデアが生まれる保障もない.得てして頭のいい人ほど,メンタル面が多少不安定な場合も多く,不安定な時期は,誰よりも働かないかもしれない.

ときおり,PERを意図的に下げる努力をした方が,自分にとって適当だと思われる位置にいた方がメンタル面ではいいのかもしれない.

そういった意味で,過度に自分のPERを上げようとするのは危険だと思う.よく,むやみやたらに外部から評価されるのを望む人がいるが,ちょっとぐらい,過小評価されていたほうが,絶対,生きていくのは楽なはずだ.特に,大規模なメディア露出は大変なリスクを伴う.その好例が,ほりえもんであったりするのかもしれない.

そういうのをきちんと制御していくことが,重要だと思うし,そういったブランディングを考えていくのも,重要だと思う.
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by mayasuke | 2006-05-21 23:52 | 未踏ソフト

ヒトの価値・モノの価値

Synvieを開発したとき思ったことがある.
これはすばらしいものだ.絶対,売れるに違いないと.
確かに売れるかもしれないし,それなりのお金になるかもしれない.

その時は,モノの価値というものはそんなに大きくないというのに気づかなかった.

企業の価値を図る指標として,時価総額というものがある.時価総額とは,株数×現在の株価である.別の見方からいえば,株主が将来にわたって見込める利益の総額であり,企業の利益×PERで決まる.PERとは,その会社の将来性をあらわす係数であり,20倍とか100倍とかで決まる.つまり,今年だけの利益だけでなく,今後20年間継続して同じだけの利益が見込まれれば20倍となるし,今後利益率が5倍になると見込まれれば100倍になるわけだ.
これは,ヒトに対しても言えるかもしれない.そのヒトの価値とは,その瞬間の価値だけではなく,今後数十年にわたる価値も内包している.たとえば,だれかと結婚するとしたら,今この瞬間だけの利益だけでなく,50年先までの将来を考え無ければならないだろうし,ヒトを雇う時は,その時点の能力だけではなく,会社を退職するまでの利益を見込まなければならない.一般に,若いヒトほど求人があるのは,このPERが高くて,給料が安いので,お買い得感が高い訳だ.

しかしながら,これがモノになると困ってしまう.モノには,価値がほとんど無い.たとえば,Synvieをパッケージ化して売るにしても,せいぜい3年とか5年しか売れず,PERが低い.さらに売ろうと思うと,時代時代に合わせてカスタマイズしていかなければならないし,メンテナンスやサポートでコストがかかる.つまり,コストばかりかかって,大した収益に成らないのだ.しかも,ソフトウェアの場合,ソフトウェア特許の問題や,著作権侵害などのリスクを背負う必要があり,自分でもっていていいことがあまりない.大概利益はコストで圧迫されてしまう.

そのあたりが,ソフトウェアをオープンソース化する企業が増えてきている理由だと思う.つまり,大して価値がないのならば,オープンソース化し,コミュニティの力を借りてソフトウェアの潜在的なバグを潰し,機能拡張し,意見を募る.企業はその周辺サポートで儲ける.しかも,未踏ソフトウェアのように,複数人で開発していて,権利関係がごちゃごちゃしやすい場合は,すっきりオープンソースにしたほうが,あとで問題なるような潜在的なリスクを回避できる.

もちろん,オープンソースの場合は,頭がいいヒト(や会社)だけが,利益をかっさらうことになり,バカなヒト(主に開発者)がせっせと只で開発に貢献するという構図になりがちかもしれないが,まぁ,そのあたりは,うまく利益を出したヒトから,おこぼれの頂戴を請求してみてもいいし,少なくとも,オープンソースに貢献したということで,自分自身のPERは上がり,将来にわたっての利益はあがるはずなので,大きな問題にはなりにくい.

未踏ソフトウェアの趣旨を最初に聞いたときに,不思議に思ったことがあった.それは,未踏ソフトウェア創造事業という名前の割には,「人材の発掘・育成」というカテゴリに属し,成果は「天才プログラマ・スーパークリエイターの発掘」という形であるということだ.名前のとおり「未踏ソフトウェア」の「開発成果」を求めるのならば,そもそも9ヶ月という開発期間はあまりにも短いし,成果としては「素晴らしいソフトウェア」であるはずだ.そのときは,どうせ役人の考えることなので,せいぜい予算さえ通ればよく,他に大した意味はないだろうと思っていたが,モノに価値が無くヒトにカチがあるという考えに立てば納得がいく.

つまり,未踏ソフトウェアの趣旨は,優秀な人材の育成と発掘のみにあり,ぶっちゃければ,開発物なんてどうでもいいのだろう.予算とかもつくけど,モノや委託開発のためではなく,開発に専念できる費用をばしっと充てるためにあるのだろう.

そう考えると,未踏ソフトウェアというモノの本質が見えてくるし,先のエントリーでも述べたが,開発成果物を用いてベンチャーを立ち上げる必要も無い.開発成果はモノではなく,ヒトであるからだ.この開発期間を通して,ベンチャーを立ち上げ成功するための道筋が見えたヒトだけが,ベンチャーを立ち上げればよい.その際,必ずしも未踏の成果をもとにする必要もないわけだ.
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by mayasuke | 2006-05-21 18:46 | 未踏ソフト

未踏の成果で起業するということ

僕は,Synvieの成果を用いてベンチャーを起業しようと真剣に考えていた.

会社を興すための資料を集め,本も読み,いろいろな企業を回り,ベンチャーキャピタリストの方々とも会い,ベンチャー設立に協力してくれるという友人とも会い,ベンチャー設立を本当に懇意になって支援していただける人たちとも出会った.実際に投資していただける話もあった.お客さんになりうる企業の方とも出会い,うまく進めばそれなりに利益をだせるかもしれなかった.僕は大学の博士課程の学生だったが,大学を辞めるつもりで,会社を設立しようと本気で考えていた.そのための覚悟があった.

でも,起業は諦めた.

では,どうして会社を設立しようと思ったのか?どうして,諦める経緯になったのか.
いくつか理由があるので,それを列挙したいと思う.

まずはじめに,会社を設立しようと思った最大の理由は,
「半ば,会社設立をしなければならないという,脅迫観念のようなものもあった」という点につきる.

未踏ソフトウェア創造事業というものは,学生や若手ベンチャーの人にとってはものすごく大金の国民の税金(数百万~千数百万円程度,その周辺サポートで動くだろうお金を考えればさらに倍?)を頂いてソフトウェア開発に専念するための事業です.一般的な研究費とは違い,直接お金を「人件費」として懐にいれることができ,貧乏の学生には涙が出るほどありがたい,半ば,奨学金に近いのです.(そんなことをいうと未踏の建前の趣旨とは異なるので怒られそうですが.)

そして,その恩を分かりやすく返すためには,なんらかの商業活動を行い,その結果「税金」としてお金を還元しなければならないと思っていた訳です.そして,それをやるためには,「ベンチャー起業」という形がベストなのではないかと思っていたわけです.

とくに日本には,アメリカに習い,「失敗を恐れず,もっとベンチャー起業を作るべきだ」という声が多く,また,未踏出身者の多くが起業している事実を鑑みれば,未踏出身者は会社設立をしなければならない,という暗黙のチカラが働くのです.ある意味,義理人情や世論に流されやすいのが,未踏開発者なのかもしれません.そのため,たとえ儲かる見込みがなくても,ベンチャーを起こすことが最重要課題だと思ってしまいがちなのです.

でも,アメリカのベンチャー起業家は「アメリカンドリーム」を実現するために,つまり,あり得ないほどの大金を手に入れるために,起業するのだと思うのです.決して義理人情で,儲かる見込みがなくて,起業する訳ではないのです.アメリカンドリームを実現することによって,それを支援してくれた人たちに,アメリカという国家に恩返しできるわけです.

1億円とか10億円とか稼ぐつもりで会社を興しても意味ないのです.IPAXでよくわからない大臣が仰っていましたが,100億円をめざす必要があるのです.さもなければ,国家的には意味が無いのです.赤字を垂れ流して死んでいく会社を良しとしてベンチャーを始めるのは,社会悪そのものです.会社がひとつ潰れれば,ものすごく多方面に迷惑がかかります.

また,技術者が会社を設立すれば,ものすごく苦労します.本来得意分野であるはずの,先進的な開発に専念できる見込みは薄く,多くの場合は技術者の苦手とする,人脈作り,営業,事務,その他の業務に追われます.効率を考えれば,そういう業務はそういうのが得意な人がやればよく,技術者は技術に専念したほうがいいです.適材適所という言葉もあります.

普通に,先進的かつある程度自由が利くと思われる企業に入って,そこで,めいいっぱい技術を磨いたほうが,ぜったい幸せですし,儲かります.その結果として,社会にも国家にも貢献できます.

つまり,会社設立して,100億円儲ける気が無いやつは,その時点で負け組みです.売れる主力製品もなく,「受託開発」のみで何年も生きていこうというのはおかしいです.

結局会社を興さなかった奴が何を偉そうなことをいうのか?というかもしれませんが,一旦会社を起こした人は,死んでもこのような弱音を吐くことはできないはずです.それが,社会人としての最低限のモラルであり,それを意識した上で,会社を設立するべきなのです.

本当にやりたいことは何か?
せっかく,他の人よりも,やりたいことがやれる「技術」や「名誉」があり,そのための努力をしてきたのだから,それをやるのがいいのです.無理して,やりたくない事をやってもうまくいかないのは目に見えています.
結局,落ち着くところに落ち着くのが,一番いいのです.
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by mayasuke | 2006-05-18 10:57 | 未踏ソフト

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